研究発表会



◆ 第17回研究発表会
宗教心理学的研究の展開(17)
−今こそ(!),今さら(?),マインドフルネスについて考える−

  •    日本心理学会第84回大会:2020年9月8日(火)〜11月2日(月)
  •    会場:東洋大学(Web開催)
  • 企画趣旨
  • マインドフルネスとの言葉が,日本の心理学会において見聞きするようになって久しい。企画者は,宗教心理学を専門にしていることから,マインドフルネスについて,心理学の立場から,宗教学の立場から,宗教者の立場から,といったように様々な分野の専門家から話を聞くことがある。そこで語られるものは,マインドフルネスという同じ用語を使っているにもかかわらず,その考え方・捉え方に差異を感じることが多い。果たしてマインドフルネスとはいかなるものであるのか。そこで本シンポジウムでは,産業組織心理学,心理臨床,仏教心理学,宗教学,宗教者(僧侶)の立場から,自分たちの分野においてマインドフルネスがどのように語られているのかについて話題提供を行ってもらう。複数の分野から同じ土俵の上でマインドフルネスを語ってもらうことで,この用語の意味するものでは何であるかを,(今こそ!×今さら?),しっかりと見据える機会としたい。

  • 企画・司会 松島公望(東京大学)

  • 当日資料
  • 話題提供
  • 1.今城志保(リクルートマネジメントソリューションズ)
  • 産業組織心理学「仕事におけるマインドフルネス」
  • 近年,欧米を中心に企業組織でのマインドフルネスの活用が進んでいるが,そこでは従業員のメンタルヘルスだけではなく,パフォーマンスの向上も期待されている。企業の関心事であるパフォーマンス向上については,効果を示す研究がある一方,効果発揮のメカニズムが十分に解明されているとは言えない。先行研究からいくつかの効果発揮のメカニズムを提示し,日本企業での活用の可能性と今後の研究の方向性について考える。
  • 当日資料
  • 2.松下弓月(東京大学)
  • 心理臨床「マインドフルネスの功利的応用は何をもたらすか」
  • 近年,マインドフルネス瞑想は心理療法のひとつの手法として広く受け入れられるようになった。悟りを目指すという仏教の宗教的文脈から切り離すことで,仏教の伝統的修行法はその効用を価値中立的に利用できるひとつのツールへと変わった。一方,本来置かれていたとは異なる場で用いられることには懸念もある。以上の背景をもとに,今回は脱文脈化したマインドフルネスの実践が何をもたらすのか考察する。
  • 当日資料
  • 3.中尾将大(大阪大谷大学)
  • 仏教心理学「マインドフルネスから「目覚め体験」へ−仏教と心理学の接点−」
  • 心理学では瞑想が注目され,心身の健康維持増進の為,研究と実践がなされている。「マインドフルネス」として,体系化がなされ,プログラムが開発された。この潮流について,発表者は異を唱えるものではない。しかし,心身の健康の維持増進は言わば,瞑想がもたらす「副産物」と考える。瞑想のもたらす最大の効果は仏教における「目覚め」体験と呼ばれるものと考える。本発表では仏教心理学の視点から目覚め体験について考察する。
  • 当日資料
  • 4.藤井修平(東京家政大学)
  • 宗教学「心理学と宗教の関係−マインドフルネスの事例から」
  • 本発表では,マインドフルネスの宗教的側面を手がかりに,心理学と宗教の関係について論じる。第3世代の認知行動療法は宗教的な価値観との親和性が強いと言われているが,さらなる多様な手法の発展の可能性はあるのだろうか。他方でマインドフルネスはその仏教的起源を秘匿して幅広い支持を得たのであり,宗教性の強調は心理学にとって障害となるのだろうか。こうした問いを,マインドフルネスの現状を分析しながら扱う。
  • 当日資料
  • 5.平子泰弘(曹洞宗総合研究センター)
  • 宗教者(僧侶)「宗教者から見るマインドフルネスへの期待や疑問」
  • 臨床心理の技法としてマインドフルネスストレス低減法が日本に導入された時に,仏教・禅の教えの再輸入とも言われたこともあり,興味深くその展開を見てきた。現在,手軽に行える行法としてさまざまな形で展開し肯定的に受け入れられているが,その領域は心理療法やリラックス方法,宗教的なものにまたがってみえる。そこで説示されるものを,宗教者としての受け止め方を通して,期待する点や疑問と思う点などを論じてみたい。
  • 当日資料
  • 6.松島公望(東京大学)
  • シンポジウムのまとめ「−宗教心理学者からの提案−」
  • 当日資料