研究発表会



◆ 第14回研究発表会
宗教心理学的研究の展開(14)
―超高齢社会における宗教性/スピリチュアリティ−

  •    日本心理学会第81回大会:2017年9月20日(水)〜22日(金)
  •    日時:2017年9月21日(火) 16:30〜18:10
  •    会場:久留米シティプラザ
  • 企画趣旨
  • 超高齢社会にある日本において,「宗教性」「スピリチュアリティ」について語られることがある。それらは,老年的超越といった高齢者の生き方の問題やスピリチュアルケア,スピリチュアルペインの問題,さらには,死の不安,死への態度といった高齢期における死と宗教の問題等が挙げられる。これらのテーマについて,「広がりを見せている」といった形で語られる場合もあるが,「以前は見聞きすることはあったが,このところあまり見聞きしなくなった」との声を聞くこともある。日本においても「宗教性」「スピリチュアリティ」の問題は重要であると示唆されているが,果たして日本ではどの程度の広がりを見せているのだろうか。本シンポジウムでは,それぞれのテーマにおける現状分析を行い,その上でこの先どのような展望を描けるのかを検討することにより,超高齢社会における「宗教性」「スピリチュアリティ」について再考する機会を持ちたいと考えている。

  • 企画・司会 松島公望(東京大学)

  • 話題提供
  • 1.大橋 明(中部学院大学)
  • 「日本における老年学,医療,看護,介護領域でのスピリチュアリティ研究の状況と今後の展望」
  • 高齢者を対象としたスピリチュアリティ関連の研究論文・解説論文・学会報告は,この10年間で年50本を超えることもあるほど増加した。一方でスピリチュアリティの定義が曖昧にされてきたためか,成果やその援用に問題が残る。WHOによって定義されたスピリチュアリティの下位領域と合致する老年的超越,宗教性,レジリエンスなど細部の研究が重ねられることで,スピリチュアリティ研究が今後発展していく可能性がある。
  • 当日資料
  • 2.河村 諒(尚絅大学短期大学部)
  • 「高齢者施設における利用者のスピリチュアルケア・宗教的な関わりの現状と課題」
  • 介護保険制度や介護報酬の改定に伴い,高齢者施設での死亡割合が増加しており,高齢者施設における看取りや終末期ケアが期待される。その際,スピリチュアルペインに対するケアも重要となるが,利用者のスピリチュアルペインは終末期だけではなく介護場面といった日常生活にも注目すべきである。そこで,終末期及び日常生活の延長としてなされるスピリチュアルケア・宗教的な関わりの現状と課題を報告し,今後の展望を考察する。
  • 当日資料
  • 3.中里和弘(東京都健康医療センター研究所)
  • 「終末期がん患者の「スピリチャルアルペインのアセスメントとケア」の現状と課題」
  • 終末期がん患者の苦痛やQOLは,身体面・精神面・社会面のみならず,スピリチャアルな側面を含めた包括的理解が求められる。ケア実践ではスピリチャアルペインの対応は極めて難しいテーマであるが,そのペインを理解する上で有益な定義やアセスメント,ケアに関する知見や研究が蓄積され始めている。そこで末期がん患者のスピリチャルアルペインのアセスメントとケアに焦点を当てて現状を報告し,今後の展望を述べる。
  • 当日資料
  • 4.川島大輔(中京大学)
  • 「高齢期における死と宗教」
  • 本発表では高齢期における死との向き合いについて,とくに死の不安と自殺のリスクについての研究知見を概観する。同時に,社会文化的文脈としての宗教が高齢期の死の問題とどのように関わっているのかについて,いくつかの事例を取り上げつつ検討する。その上で,高齢期における死と宗教に関わる研究ならびに実践において,今後の解決すべき課題と展望について議論したい。
  • 当日資料

  • 指定討論者:末田啓二(神戸親和女子大学)
  • 当日資料