研究発表会



◆ 第13回研究発表会
宗教心理学的研究の展開(13)
−宗教/スピリチュアリティと臨床現場との関係:敵か味方か,それとも…?−

  •   日本心理学会第79回大会:2015年9月22日(火)〜24日(木)
  •    日時:9月22日(火) 13:10〜15:10
  •    会場:名古屋国際会議場
  • 企画趣旨
  • 宗教/スピリチュアリティと臨床現場については,これまでも様々な形で論じられてきた。それは,宗教/スピリチュアリティの有り様は,臨床現場と近しい関係があるからではないだろうか。しかし,近しいとはいってもそこには様々な関係が存在しているように思われる。それは「親和的な関係」の場合もあるだろう。反対に「敵対関係」や「緊張関係」といった場合も考えられる。そのような状況を踏まえて,本シンポジウムでは,「宗教/スピリチュアリティと臨床現場との関係」についてどのように考えることができるのか,捉えることができるのかについて検討する。看護,介護,福祉,医療,心理における臨床現場に実際に関わっている方々に現場で感じたこと,経験したことを率直に語ってもらい,その上で,宗教/スピリチュアリティと臨床現場とを結び合わせようとした時にどのようなものが浮かび上がってくるのかについて討論する機会を持ちたいと考えている。

  • 企画・司会 松島公望(東京大学)

  • 話題提供
  • 1.石井賀洋子(医療法人大真会 大隈病院)
  • 「臨床現場にみる宗教」
  • 宗教という言葉は,医療現場では好まれるものではない。どちらかといえば,医療従事者にとって触れたくない言葉であろう。それは,なぜなのか。なぜ避けられるのか。治療の妨げになると宗教を遠ざけようとする医療従事者は,少なからず存在するのである。病室のカーテンの向こうで繰り広げられる,宗教に関わる行為をどう受け止めるか。臨床で生きる看護師として,また教育者としての大きな課題である。
  • 当日資料
  • 2.岡村宏美(関西医科大学附属滝井病院)
  • 「宗教と臨床現場の関わりを考える」
  • 私は,宗教と臨床は相容れないものではなく,「信じる」という大きな共通項があると考えている。臨床において相談者−カウンセラーが双方を「信じる」ことでお互いの力量を超えたなにか=宗教性が働き,場が展開することが多いように感じる。また,相談者の中には特定の信仰をもつ者も多い。我々は日頃から宗教性に開かれ,様々な宗教に対する理解を深めるよう努力する事で,より相談者にそった柔軟な臨床活動ができると考える。
  • 当日資料
  • 3.山口 豊(東京情報大学)
  • 「臨床と仏教体験−自らの体験を振り返りながら−」
  • ユングによると,心理療法の価値は療法家自身の神経症的分裂の統合によって証明されるという。「心理療法論」みすず書房p67。このことは,心理学,特に臨床においては療法家の臨床体験が重要な意義を持つことを意味する。今回紹介する私自身の仏教体験(禅,ヨーガ,瀧行,密教)は,自分にとっての臨床効果への要請から始まったものである。自己の体験を通じ心理療法の可能性を考えていきたい。
  • 当日資料
  • 4.大村哲夫(東北大学)
  • 「宗教と臨床現場との関係:認知症高齢者の心的世界と宗教性」
  • 発表者は,教義に基づく「宗教」というより「自他を超越する存在に対する合理性に捉れない態度」を「宗教性」と措き,これと「臨床」との関係を論ずる。多くの日本人は「宗教」を信じないが,初詣や墓参は行い,死後の魂を認めるという宗教的な心性を持っているからである。実際,臨床現場でクライエントと会う時,心性の根柢にある宗教性を蔑ろにはできない。心に宗教性が存在する以上,敵でも味方でもなく心そのものなのである。
  • 当日資料

  • 指定討論者:丹野義彦(東京大学)