研究発表会



◆ 第12回研究発表会
宗教心理学的研究の展開(12)
―宗教心理学とできること―

  •    日本心理学会 第78回大会:2014年9月10日(水)〜12日(金)
  •    日時:2014年9月11日(木) 9:20〜11:20
  •    会場:同志社大学今出川キャンパス
  • 企画趣旨
  • 昨今,「日本人の精神性やメンタリティについて問われている」と様々な領域で語られている。とりわけ,2011年3月11日の未曾有の大震災を経験したことにより,それらのことがより強く語られるようになったと思われる。日本人の精神性,メンタリティのなかには必然的に宗教性,スピリチュアリティが含まれるであろう。実際,東日本大震災を通して,宗教性,スピリチュアリティの問題がクローズアップされている。宗教心理学は,宗教性,スピリチュアリティを主たるテーマとする学問領域であり,まさに今問われている日本人の精神性,メンタリティについて真正面から取り組んでいく必要がある。しかし,これらの問題は宗教心理学だけで対応できるものではなく,様々な領域との連携,協働があって成し遂げられるものである。本シンポジウムでは各領域との連携,協働のあり方,可能性−宗教心理学とできること−について討論することを目的とする。

  • 企画・司会 松島公望(東京大学)

  • 話題提供
  • 1.岡田正彦(栃木県立岡本台病院)
  • 「精神保健福祉の臨床現場で宗教心理学とできること」
  • 発表者は,アルコール専門医療に従事している精神保健福祉士兼認定カウンセラーである。アルコール依存症者への支援は,先ず,断酒を継続していくことが重要なポイントである。その社会資源として重要なのが,AA等のセルフヘルプグループである。AAの「12のステップ」ではスピリチュアリティが重要視され,宗教心理学的にも非常に興味深い共同体である。当日は臨床経験を踏まえながら,話題提供を行いたいと考えている。
  • 当日資料
  • 2.安藤泰至(鳥取大学)
  • 「生命倫理から宗教心理学に期待すること,協働できること」
  • 生命倫理問題は,狭義の生命倫理(学)の専門家だけではなく,関連諸領域の研究者や病い・障害の当事者を含め,今日の私たちの生と死が置かれている文化的・社会的文脈に照らして広く議論される必要がある。本発表では,現代の医療・生命操作システムを補完する働きをしている心理専門職によるケアについて,および現代人の死生観をめぐる生命倫理言説についての批判的考察を中心に,宗教心理学の貢献可能性について検討する。
  • 当日資料
  • 3.松田茶茶(関西保育福祉専門学校)
  • 「死生学から宗教心理学に期待すること,協働できること」
  • 極めて学際性の高い分野である死生学が問いの根本とするのは,“人はなぜ今ここに居り,いかに生き,どのように死に向かうか”という自己存在の肯定への努力である。これはヒトが人間として生きるゆえの不可避的な問題であり,それをサポートするのが宗教である。生身の人間を超える何かの力に,望ましい現実を願う心理を体系的に捉えようとする宗教心理学を死生学の不可分パートナーとして,今後の研究を展望する。
  • 当日資料
  • 4.木村 健(特定非営利活動法人ratik(NPO ratik))
  • 「学術コミュケーション(出版)から宗教心理学に期待すること,協働できること」
  • 一冊の本は研究者の人生を変えてしまう力を持っている。他方,大量生産・大量消費を前提にした印刷・出版は近々に迫る「人口減少社会」を前にして存続の危機にある。次代に向けて「書籍」を通した「学術コミュニケーション」をいかに確保していくか。「心」を扱う諸学・諸実践にとって避けて通れない「宗教」という主題において,たとえ小規模でも緻密に議論を深めるための場を生み出すためにできることを考えてみたい。
  • 当日資料

  • 指定討論者 森岡正芳(神戸大学)