2012年度科学研究費補助金・研究プロジェクト
日本心理学会第77回大会シンポジウム
宗教性/スピリチュアリティと精神的健康の関連(1)
日本心理学会 第77回大会:2013年9月19日(木)〜9月21日(土)
日時:2013年9月19日(木) 13:10〜15:10
会場:札幌市産業振興センター
企画趣旨
1998年にWHOにて健康の定義のなかのスピリチュアルに関する議論がなされたことを受けて,日本においても,宗教性/スピリチュアリティと精神的健康への関心は高まっている。欧米を中心に海外では,宗教性/スピリチュアリティが精神的健康に与える影響の大きさについて様々な研究で報告されているが,日本ではほとんど行われていないのが現状である。そのような現状を受けて,2012年度より,「宗教性/スピリチュアリティと精神的健康の関連」の研究プロジェクト(科学研究費補助金・基盤研究(B),課題番号:24330185,研究代表者:松島公望)が始動した。このプロジェクトは,これまでにない規模の大きさや連携がなされており,新たな成果が期待される。本シンポジウムでは,本プロジェクトの概要を紹介し,それらを基に,日本における宗教性/スピリチュアリティと精神的健康の意義や可能性について議論したいと考えている。
企画・司会 松島公望(東京大学)
話題提供
1.質的研究班に関する報告 浦田 悠(京都大学)
発表要旨 質的研究班では,喪失経験を通じた意味の再構成と宗教性/スピリチュアリティとの関係に着目し,特に震災による複合的な喪失をテーマとしている。現在までに,東北と関西の2地域でフィールドワークを実施するとともに,災害と宗教に関するこれまでの理論や知見を整理すべく,文献研究も進めてきた。本発表では,これらの研究の概要と成果を報告し,宗教的ケア・精神的健康・意味再構成の関係性を考えたい。
当日資料
2.数量的研究班に関する報告@:班活動全体の報告 徳野崇行(駒澤大学)
発表要旨 本発表では,数量的研究班の活動報告として,まず宗教観尺度・宗教行動尺度・諦観尺度・スピリチュアリティ的信念尺度・死別後の主観的変化尺度・死観尺度・主観的幸福感尺度などの質問項目を用いた調査票による予備調査の実施状況やこれまでの検討内容について報告する。次いで,キリスト教会の信者や浄土真宗の門徒,曹洞宗の檀信徒,宗教系大学の大学生などを主な調査対象とする本調査の概要について報告する。
当日資料
3.数量的研究班に関する報告A:量的調査からの検討 具志堅伸隆(東亜大学)
発表要旨 予備調査で用いた主な尺度は,宗教観尺度(金児, 1997),スピリチュアリティ的信念尺度(具志堅, 2011),主観的幸福感尺度(伊藤・相良・池田, 2003)の3つであった。分析の結果,スピリチュアリティ的信念尺度が3つの下位尺度「心象の現実化」,「因果応報」,「人生の意味」から構成されること,宗教観尺度の「霊魂観念」が「人生の意味」を介して,主観的幸福感を高める働きをしていることが明らかとなった。
当日資料