会員著書紹介
浅岡夢二著 『フランス文学と神秘主義』(人間幸福学研究会 2011年)
編著 浅岡夢二
出版年 2011年
出版社 人間幸福学研究会
体裁 四六版 283頁
ISBN 978-4-905437-01-7
価格 非売品(下記を参照ください)
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〒142-0041東京都品川区戸越1-6-7
人間幸福学研究会
松本智治(まつもとともはる)
tomoharu@99.alumni.u-tokyo.ac.jp
■ 目 次 ■
※「まえがき」と「あとがき」は、本書からの引用です。
まえがき …… B
本書は、一人のフランス文学研究者による、大胆な冒険の書である。
すなわち、神秘主義を主軸に据えて、霊的世界を学問的に扱った、他に例を見ない研究書である。
序章では、「フランス文学と仏法真理」と題して、なぜ霊的世界を扱うようになったのか、その個人史を簡単に述べてみた。
第1章では、さまざまな顔を持つシモーヌ・ヴェイユの、神秘家としての側面に光を当てた。ヴェイユは、一九〇九年にパリで生まれ、彗星のように戦争時代を駆け抜けつつ、歴史、文明、宗教などに関わる明晰な文章を大量に残し、三四歳の時に、イギリスのアシュフォードで若くして亡くなった哲学者である。純粋かつ神秘的な魂を持つ、慈悲にあふれた存在であった。
第2章では、聖女テレーズの信仰の光と闇について論じている。聖女テレーズは、「リジュのテレーズ」とも呼ばれる修道女で、生涯をリジュの修道院でつつましくすごし、二四歳でこの世を去った。生前はまったく無名であったが、死後にその自叙伝が大ベストセラーとなって、一躍有名となり、彼女の修道院には巡礼者が押し寄せるようになった。真の意味における「謙譲」を体現した宗教家だったと思う。
第3章では、サン=テグジュペリの宗教性を取り上げ、第4章では、『星の王子さま』を素材として、悟りの世界について語ってみた。
第5章では、大作家ジュリアン・グリーンの神秘体験について、かなり詳しく論じている。
いずれの文章も、先入観を排して虚心坦懐に読んでいただければ幸いである。
序章 フランス文学研究と仏法真理 …… 1
第1章 神秘家としてのシモーヌ・ヴェイユ …… 33
1 シモーヌ・ヴェイユの様々な〈顔〉
2 自由の確保
3 聖人としてのシモーヌ・ヴェイユ、あるいはシモーヌ・ヴェイユの聖性
4 ヴェイユにおける聖性の種々相
5 神秘体験
第2章 聖女テレーズの信仰の光と闇 …… 71
1 テレーズの幼年時代
2 テレーズが受けた5つの試練
3 様々な神秘体験
4 悪魔の影響
5 テレーズと瞑想
6 テレーズの信仰の特徴
第3章 サン=テグジュペリの宗教性 …… 121
1 サン=テグジュペリとキリスト教の関係
2 夢想
3 修道
4 瞑想
5 愛情
6 無私
7 真実
8 静寂
9 精神
10 犠牲
11 至福
第4章 小さな賢者「星の王子さま」 …… 179
1 物質的価値から精神的価値へ
2 夢と現実
3 意識の場
4 波動の世界
5 愛という秘儀
6 絆を結ぶ
7 悟り
8 宝
9 瞑想
10 煩悩
11 悲しみ
12 愛ゆえの苦しみ
13 六大煩悩
14 火山
15 心と世界
16 王様
17 うぬぼれ男
18 呑み助と実業屋
19 点灯夫
20 地理学者
21 ヘビ
22 花、こだま、キツネ
23 転轍手
24 丸薬売りのあきんど
25 光
26 砂漠の中の井戸
27 解脱
第5章 ジュリアン・グリーンにおける神秘体験の諸相 …… 241
1 はじめに
2 神秘体験(1)─愛の直接体験─
3 神秘体験(2)─とてつもない幸福感─
4 神秘体験(3)─意識の拡大─
5 神秘体験(4)─真の自己との出会い─
6 結論
あとがき …… 283
カント以来、学問は霊的世界を扱わないことになっている。だが、それは、霊的世界が存在しないからではなく、霊的世界を論ずるための充分な資料が存在しなかったからである。
現在、霊的世界、神秘主義、神秘体験に関する正確な情報が、大量に公開されつつある。
そうした状況を踏まえて、神秘体験と霊的世界との関わりについて学問的に論じ、ここに一書となした。いわば、学問的なタブーへの挑戦である。
これを、新たな学問と見るか、単なる戯言と見るか、判断する人間の責任が厳しく問われることになるだろう。
フランスには、まだまだ、デカルト、パスカル、メーテルリンク、シャルル・ペギー、ポール・クローデルその他、神秘主義的な傾向を示す作家は多い。
今後も精進に精進を重ね、新しい霊性の時代の学問を構築していきたいものだ。
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